モネロス

予定どおり『おかえりモネ』が終わった瞬間からモネロスの番頭さんです。もう最後の3週は涙無しで観られた日はありませんでした

玄人筋では史上最高の朝ドラと言われるくらいの傑作になったと思いますが、何が素晴らしかったのか番頭さんなりの分析をしてみたいと思います

まず主人公モネの描き方が良かった。(なぜか)木に登るお転婆娘といったステレオタイプの朝ドラヒロイン像を排除して、現代の20歳前後の女性像をしっかりリアリティをもって描いたこと。菅波先生とのプラトニック過ぎる関係には不自然さを覚えることもありましたが、これも現代におけるひとつの「愛のかたち」なんでしょうね。菅波先生の草食性はネット上でも話題になり、世の草食男子たちによって「俺たちの菅波」というワードまで生まれたようです(密かに今年の流行語大賞と睨んでいますw)

二つ目は音楽と映像のバランス。高木正勝さんによるピアノ曲は小川のように常に彼らの傍らを流れ、時折アン・サリーさんのスキャットがその川音を彩っていました。撮影、要は光の挿し入れですが、東京編の半ば辺りまでは先述したペールトーン(寒色)に染まっていたのが、いつしか自然光の暖色が多く入ってきていました。モネとその家族友人たちの心の雪解けを象徴していたのでしょう。優れた映画、たとえば黒澤明の『七人の侍』をとって見ても映像と音楽のバランスがあってこそ本当の傑作となり得ますが、その点だけ採っても朝ドラ史上稀有な作品であることが分かります

三つ目が出演俳優たちの見事なパフォーマンス。これ以上ないほどの見事なキャスティング。特に年配俳優たちの熟達した演技はそれが演出されたものとは思えないくらいに自然なものでした。藤竜也と内野聖陽などは本物の親子にしか思えないですし、夏木マリ、浅野忠信、鈴木京香、西島秀俊らには全員助演男女優賞をあげたくなりました。原作の安達奈緒子氏の取材に根差したリアリティ溢れる脚本の力も絶大だったのでしょうね

安達氏の狙い通り、この作品はかの大震災で失われてしまった魂と、そのことに囚われたまま生きながらにして浮遊していた魂へのレクイエム(鎮魂歌)となりました。人はどんな困難に遭おうとも幸せになるために生きている、とうとう姿を現すことがなかった宇田川さんの苦悩もこのテーマの重要なパーツになっていたのだと思います

来週からまた新しい作品が始まります。モネに負けないような作品になることを期待して止みません

さて今日の一曲

以前震災の映像を絡めた動画でご紹介しましたが、本来は「No Nukes(原発反対)」プロジェクトでの録音です

アン・サリーの筆生のヴォーカルです

では今回もご覧いただきありがとうございました

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