『僕の日本人助産師を探して』(閲覧注意)

凄いテレビ番組を観ました

NHK/BSで先週の金曜日(4日)に放映された『戦後80年・僕の日本人助産師を探して』というドキュメンタリー

中国の若いジャーナリストが、自分を取り上げてくれた残留日本人の助産師の消息を追いかけます。浦山あき子という助産師は満州開拓民のひとりでしたが、日本敗戦でも故郷に引き揚げることができず、後に中国籍を取得し一万人以上の子供を取り上げて地域から尊敬される人間となります

このジャーナリストは日本へも渡り、その娘や孫に会うことができました。ご本人は既に亡くなっていましたが、関係者たちへのインタビューで日本での彼女を取り巻く環境の変化、そして何より今まで語られることのなかった、悪夢の時代に翻弄された悲劇が浮き彫りにされてゆきます

浦山さん自身が自費出版した『死線を越えて』という著作もあるようです。番頭さんはこのテレビ番組を通して初めてその壮絶な生涯を知るに及びましたがここでは語りません、語れません。文字起こしするだけで手が震えそうになります。

この寇愛哲という若いジャーナリストの旅は日本だけでなく満州開拓団が住んだ土地も訪ねます。今は普通の中国人の暮らしのある風景の中、日本人という言葉に拒絶反応を示す人たちもまだ一定数いるようです。当然です。この国では日本は侵略者でしかなかったのですから。ただそんな中で出会った今年100歳になるという中国人の老人の言葉が胸を打ちます。「逃げ惑う開拓団の人たちはあまりに可哀想だった。若者よ、戦争は絶対にしちゃいかん。軍服を着てしまったら君だって命令に従わなければならなくなる」ここでは書きませんが、どうか皆さんも浦山さんの悲劇について知ってみてください。



寇愛哲さんは「故事FM」というラジオ番組を持っており、この旅のことをずっと語っていました。当初は「日本人の肩を持つとは何事だ」「祖先が日本軍に何をされたか忘れたのか」などといった批判の声が多く届いたようですが、最後に浦山さんが遺した「私が取り上げた子たちは皆何をしているのだろうか」という想いに、番組内でその子たち(みんなもう中年です)が自分の近況と浦山さんへの感謝を語ります。それでもまだまだ批判の声はあるのだろうと思いますが、リスナーの多くが「今まで日本は加害者でしかなかったけど、同じように時代の犠牲者だった」など、彼女の悲劇を通じて国家を越えた人間の哀しみを深く捉えていたのはとても感動的で、観ている側も何か救われたような気になりましたね


もうすぐ参議院選挙の投票日がやってきます。外国人の犯罪をなんとかしろ、日本人を第一にしろという声を挙げている政党が異常な躍進をみせているとのことですが、安易な排外思想は何も産まないどころか分断と憎悪の連鎖を招くだけです。どこの党の誰それに入れてくれなどと野暮なことは言いませんが、排斥よりも共生しやすい社会を目指している人たちを応援したいものです



長々と堅苦しい文章で申し訳ありませんでした。奥方様は次回作に向けて奮闘中です

今日の一曲。貼るのは何回目だろう?

チャカ・カーンをヴォーカルに迎えた特別編成のヴァージョンです


ちなみに件の番組は11日(金)の深夜(木曜日から明けて)0:25~1:25に再放送があるようです。NHKオンデマンドでもたぶん観ることはできると思います。興味持たれた方はぜひ


今回は笑いのひとつもありませんでしたが、それでもご覧いただきありがとうございました

『僕の日本人助産師を探して』(閲覧注意)” に対して8件のコメントがあります。

  1. ゆう より:

    いままさに再放送を見ました。最後の日、あき子さんがおさな娘ふたりをちかくの山であそばせたその先は、もう見ることができず、テレビを消しました。そしてここへきました。五年前に世を去った私の父は軍国少年として育てられ、海軍工廠での学徒動員により学問の機会も奪われ、好きな野球も奪われました。その後、懸命に働いて兄と私、弟を育てました。父は折に触れて私たちに語りました。「戦争なんて、あんな馬鹿なこと、絶対にしちゃいかん。」

  2. karinko13 より:

    ゆうさん、お返事ありがとうございます。田中角栄の有名な言葉「我々戦争を知る者が政権に入るうちは大丈夫だ。時が経って戦争を知らぬ者だらけになった時に日本は再び危うくなる」今まさにそうなった時代が動き出しています。今回の参院選は驚きと失望の結果が待っていることでしょう。カルト政党が大いに伸び日本は間違いなく分断の季節になりますが、お父上がおっしゃったように、あのような馬鹿げた時代にならぬよう老骨も常に声は挙げていかねばなりませんね

  3. まんなか より:

    今私達が現在、豊かで安全な暮らしが出来ているのも、先の戦争で多くの人達が犠牲になりながらも
    乗り越えて来たおかげだと心から思います。

    戦争は現場で戦った人は勿論の事、民間人も本当に大きな犠牲者になったと言う事を忘れてはいけません。

    若い頃に、中国残留孤児の方々が日本に一時帰国するニュースを当時よく見ました。

    当時は中国もまだまだ貧しくて、その後復興した日本に戻りたい残留孤児の方々は、多かったようです。

    でも日本で受け入れてくれる身内の事や、中国にいる配偶者や子供達の事が大きな問題になり、簡単に帰国には至らないと報道していた事を思い出しました。

    現在日中国交は、政治絡み問題が山積みで、中国人も日本人もお互いに違和感を抱えながらも、梶山あき子さんを取り上げて下さった冠愛鉄さんは、素晴らしい方だと感謝せずにはいられません。
    そんなご子息を育てあげられたご両親も、本当にご立派な方々です。

  4. Pay It Forward より:

    録画した、この番組を見て、さらに、このブログを見て共感しました。
    他のサイトなどでも、出典を明示して引用させていただきます。多くの人に知ってもらい、平和な世の中になってもらいたいからです。
    浦山(山口)さんの墓地、私が最近、使用権を取得した墓地と同じだと思います。この墓地には「核廃絶」など平和を求める墓碑が少なくありません。
    平和を求める人々が増えていくことを願います。

  5. karinko13 より:

    まんなか様、コメントをありがとうございます
    そうですね。日中関係は今あまり良いとは言えない状況ですが、こうして若い人たちが積極的にお互いを理解しようと動いているのを見るとだいぶ救われた気持ちになります
    ブログにも貼り付けた「What’s goin’ on」という曲でも歌われている「戦争は答えではない。愛だけが憎しみを制することができる」。理想論だお花畑だという声もありますが、花も咲かせられない世の中にはしたくないですね

  6. karinko13 より:

    Pay It Foward様、コメントありがとうございます。墓地のお話、驚きです。引用はおっかない気もしますが(笑)いろんな方と少しだけでも思いを共有できれば嬉しく思います

  7. Pay It Forward より:

    150超の国・地域で10億回以上ダウンロードされ、社会現象になった「ポケモンGO」。
    このゲームアプリの開発を指揮した野村達雄さんは、1995年秋、9歳のときに初めてゲームに触れた。
    日本語はまったく読めず、書けず、話せなかった。中国の小さな村で育った少年がなぜ日本で人気ゲームを生み出すことになるのか、話はそこから60年前にさかのぼる。
    彼の祖母は、満州に渡り、ソ連の侵攻で運命は激変した。
    彼は、中国残留婦人2世にあたる父に連れられ、小3で中国から東京に移住してきました。
    ゲームは大事なコミュニケーションツールになった。
    「ただのアクションゲームだろうと思って中古で買った『メタルギアソリッド』が、遊んでみると戦争や核拡散防止をテーマにした深い物語で。
    エンディングには『しかし1998年現在、世界にはなお2万6千発の核兵器が存在している』という文字が流れて、現実ともリンクしていました。
    僕自身、満蒙開拓や第2次世界大戦という歴史上の混乱の結果から生まれた存在という自覚があり、なおかつ『日曜討論』や『ニュースステーション』を好む“中2病”的少年でしたから(笑)、そのストーリーに引き込まれました。
    それと同時に、『ゲームには、作り手が思いを込め、メッセージを発信する強い力があるんだ』と衝撃を受けました」
    彼は、中学校で一つの提案をした。「総合学習の時間に『アフガンの人のために募金活動をしよう』と同じ班の仲間に言いました。
    アメリカの人たちへの支援活動をする班が多かったのですが、どうしても、アフガンで戦争に巻き込まれ、困っている普通の人が気がかりでした。それに、子ども心に『アメリカでは1万円でも大した物を買えないけど、貧しいアフガンではより多くの人を救えるだろう』と考えていました。
    長野駅前などに分かれて立ち、2日間で20万円が集まりました。
    国連の難民高等弁務官事務所に送ると、アフガン支援政府代表を務めていた緒方貞子さんから感謝の手紙が学校に届きました」
    この経験は、ゲームディレクターとしての原点の一つになった。
    (読売中高生新聞 2022/05/03 より抜粋修正)
    満州からの帰国者には、なかにし礼さん、ちばてつやさんなど平和を訴える人が少なくない。

  8. karinko13 より:

    野村さんの話は私もやはりテレビ番組で観ました。私はゲームはまったくやらないのですが、お店近くの神社の前で歓声を上げる若者たちがいて初めて「ポケモンGO」の存在を知りました。素晴らしい人ですね。人の痛みを知る人がほんとうの優しさを持つことができるのでしょう。

    さて、今日は参院選。日本全国に失望と恐怖が走りそうで今から憂鬱です

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